4年目

 1999年の春になり、パソコンを始めて4年目に入りました。2ヶ月間の講習会が終わり暇ができたので、CD−RWで音楽CDを作ることに熱中していました。

 「ソング頼太」という作曲ソフトを使ってMIDIを作り、ホームページのBGMに使っていましたが、MIDIではCD−Rに焼いてもデータとして保存するのでパソコンでしか聴けませんでした。たまたま「Win Groove」というソフトでMIDIからWAVEに変換できるということを知りました。

 WAVEに変換できれば、あとはCD−Rに焼くだけで、ラジカセやカーステレオで聴くことができます。楽器を弾けない私でも音楽CDを作られることに感激したものです。パソコンの可能性とは凄いものだと実感しました。

 出来上がったCDに「カーペンターズヒット曲集」などのラベルを貼り、「編曲・演奏:西久保希光」と書き込んで悦にいっていました。こうして作ったCDを知人にプレゼントして喜ばれました。「本当に西さんが演奏したの?」と皆が驚きました。

 そこで種明かしをするのです。「パソコンでそんなこともできるの?」更に驚く相手にパソコンを始めるよう勧め、私の生徒は増えていきました。

 私のホームページが開設一周年を迎え、アクセス数は2万になっていました。 表示方法に関する質問のメールが多くなっていたので「Java サンプル集」を掲載しました。これが逆効果で更に質問メールが増えてしまいました。嬉しい悲鳴です。

 私は不動産業用のソフトを作りたいと考え、プログラミングの勉強を始めました。不動産業用のソフトはいろいろありますが、不動産業の実務経験がない人が作ったソフトは実用的ではないのです。しかも価格は数十万円もします。パソコンを教えたりホームページの制作をしても、収入は高が知れていますが、ソフトを開発すれば大金が儲かると考えたのです。

 Visual Basic の参考書を買い集めて勉強を始めました。 しかし、開発ツールがなければ実際に作ってみることはできません。本で読んだだけでは次々と頭から消えてしまいます。そこで、ソフトを買いにパソコンショップへ行ってみました。

 Visual Basicには学習者向けの「ラーニング」個人向けの「プロフェッショナル」企業向けの「エンタープライズ」があります。Visual Basicの他にもいろいろな開発ツールがあります。どれを買ったら良いのか迷いましたが、結局、Visual C++、Visual J++、などがセットになったソフト開発会社用のツール Visual Studio 6.0 Enterprise Edition にしました。

 大金を儲けるためには良い道具が必要だと考えたのです。新しいパソコンを買う予定でしたが、それを諦めて買ってしまいました。プログラミングの勉強は順調に進んでいました。

 秋になり、またパソコン講習会を開きました。今度は「初心者講習会」と「ホームページ講習会」のふたつの同時進行です。テキストは半年前に作ったものを手直しして使いましたが、ホームページ用は新たに作りながら講習を進めました。忙しさは前回以上です。プログラミングの勉強は一時お休みとなりました。

 12月に入り、講習会が終了しました。今回も受講生の方たちが謝恩会を開いてくれました。教え子も延べ100人を超え、教えることの楽しさも増してきました。

 中断していたプログラミングの勉強を再開しました。1年間でマスターして、半年でソフトを完成させる予定を立てていましたが、心の中ではあと半年でマスターしてみせるぞと思っていました。1年後には大金が入ると思うと勉強にも熱が入ります。

 そんな或る日、魅力あるメールマガジンに出会い、私もこんなマガジンを発行してみたいなあと思うようになりました。講習会の間は更新も侭ならなかったホームページも大幅に模様替えをした結果アクセスが増え、開設1年半後の12月の半ばには3万を超えました。

 毎晩深夜まで酒を飲みながらプログラミングの勉強を続けていましたが、12月18日、前夜は少し飲み過ぎたので、目が覚めてもボーっとしていました。昨夜は何か特別なことをしたような気がするのですが思い出せません。

 パソコンを起動すると、デスクトップに「重要」という名のテキストファイルがあります。内容を読んでいる内に昨夜のことを思い出しました。酔った勢いでメールマガジン発行の申し込みをしていたのでした。酔っていても、忘れたら困ると考えていたのでしょう。

 「61歳パソコン教師の日記」というタイトルで日刊です。パソコンのこと以外のことも書きたいと思ったので「日記」という文字を入れたのです。「日記」なら日刊だろうということです。私は頭を抱えてしまいました。酔っていたとはいえ、大変なことをしてしまったと思いました。

 急いでキャンセルしようと思い、「まぐまぐ」にアクセスしてみると、既に数十人の方から購読申し込みが入っていました。今更止めるわけにはいきません。慌ててホームページに「まぐまぐ」のページを作り、創刊号の準備をしました。

 12月23日、発行OKとなり、恐る恐る第1号の配信予約をしましたが、内心はドキドキです。数時間後には10人ほどの方から激励のメールが届き、ホッとしました。でも、プログラミングの勉強もしなければならないので、いつまで続くか自信がありません。せめて1ヵ月は続けなくてはと思っていました。

 創刊1週間後の年末には購読者が千人を超えました。読者の方々からのメールも増え続けています。予期していなかったのはホームページのアクセス数です。一気に2倍以上に増えました。こうなると1ヵ月で止めるなどと言ってはいられません。せめて1年間は続けようと決心しました。

 年が変わりミレニアムです。マガジンを書き、質問メールの返信を書くことで1日が終わってしまいます。しかし、これによって私は今までに勉強してきたことを復習できたのですが、プログラミングの勉強は当分お預けです。

 創刊1ヶ月を機会に読者の方々のために新しい企画を始めようと考えていました。マガジンを読んでメールをくださる方は私と同年代の人がほとんどです。これは「61歳パソコン教師の日記」のタイトルのためでしょう。

 パソコンの世界は若い人が主です。どこのサークルも若い人が多く、私たち中高年者にはしっくりきません。マガジンの読者の方たちと中高年者のためのメールサークルを作ろうと思い付きました。

 マガジンで呼びかけると読者の方たちは予想以上の人が入会申込みをしてくれました。あっという間に100人を超え、この先私ひとりの力ではやっていけないことが予想できましたので、会員の中でサークルを担当してくれる人を募集しました。

 そこで、今では掛替えのない人との付き合いが始まりました。創刊直後からメールをくださっていた「徳さん」が引き受けてくれたのです。それからは徳さんとの二人三脚です。毎日のように電話とメールで連絡を取り合い、会員も順調に増え続けました。

 ホームページを開設して沢山のメールフレンドができましたが、マガジンの発行でその数が一気に増えました。その上「徳さん」という親友もできたのです。考えてみれば不思議なものです。一度も会ったこともないのに、兄弟以上の親しみを感じる仲になっていました。全てマガジンを発行したお陰なのです。

 マガジンを発行して私の生活が変わり、考え方まで変わってしまいました。ソフトを開発して金儲けなんて考えは消えてしまい、読者の皆さん、メールをくださる皆さんに喜んで貰うことが私の生甲斐となっていたのです。パソコンを始めて4年目は私の人生にとって大きな転換期となり、新たな喜びを与えてくれたのでした。

 「5年目」は暫くお待ちください。