今回は気の合った三家族十一人の旅行だ。赤道を越えて南半球へ行ってみたいという希望で、インドネシアのバリ島に決まったのだ。治安が良いし、料金も一番安いのが理由だ。

 家族連れということもあって、ホテルはヌサドアのプトウリ・バリ・ホテルにした。空港から車で二十分も走ると、大きな割門が見えてくる。その先がヌサドア地区だ。手入れの行き届いた広大な芝生の敷地に、大きな一流ホテルが点在している。バリ島の中で、ここだけが別世界のようだ。インドネシア政府の肝いりで開発された、外国からの観光客のための地域なのだ。

 バリ島に到着して三日目に、私達はタクシーでクタビーチへ行った。クタビーチは若者に人気のビーチだ。ヌサドアと違って、Tシャツ屋、土産物屋、銀細工の店、レストラン、安宿など雑多な店が軒を連ねているが、開店している店は少ない。

 先ずは、夕日で有名なビーチへ向かう。昼間のビーチは閑散としていて、砂浜にはごみが散らかっている。期待外れだ。一人の男が入場料を払えと言ってきた。周りを見ても誰も入場料なんて払っていない。日本人なのでカモだと思ったのだろう。一人僅か十円ほどの金額だが納得できない。押し問答をしていると数人の男達が寄ってきた。結局、トラブルを避けるために料金を払ったが、これでクタビーチの第一印象は随分悪くなった。

 早々にビーチから引き上げて一軒のレストランへ入った。お世辞にも綺麗とは言えない。客は疎らにいるだけだったが、蝿が多い。料理に蝿が寄ってきて、いくら追い払ってもきりがない。何匹もの蝿が料理にとまる。私達はほとんど食べずに店を出た。

 次ぎに銀細工の店に入ってみた。若者が相手だからなのだろう。ほとんどが金額の張らない小物ばかりだ。指輪を五個選び、値段の交渉を始めた。言い値の三分の一くらいまで下がったが、あと千ルピア下げさせようと交渉を続けた。十分ほど粘ったが、その千ルピアが下がらない。ふと、千ルピアは数十円にすぎないことに気が付いた。千ルピアを千円と錯覚してしまうのだ。

 翌日の夜、食事をしに再びクタビーチへ行った。夜のクタは人が多く活気に溢れている。レストランはどこも人でいっぱいだ。昼間の眠ったような町が嘘のようだ。私達はシーフードレストランに入った。ここも客でごったがえしている。入り口で魚介類を選び調理方法を伝える。テーブルが空くのを待って席に付く。涼しくなったせいか蝿はいない。

 待つ間もなく、注文した料理が次々と運ばれてくる。チリソースで味付けした大きな海老や変わった形の蟹、塩茹でした小海老や貝、あんかけ風の魚、少々心配だったが刺身もある。大きなテーブルが料理でいっぱいになってしまった。更に料理が出てくる。どうやら注文をし過ぎたようだ。男達はビールのお代わりを繰り返す。女房や子供達はひたすら食べる方に専念している。一時間も経つと、さしもの料理もあらかた平らげてしまった。〆て十数万ルピア。なんと一万円ほどだ。ヌサドアのホテルなら数倍はするだろう。「また来ようね」女房達は大満足だ。

 すでに夜も更けていたが、クタの町はますます賑わいを増していた。若者の町クタは夜になると息を吹き返す。この賑わいはおそらく明け方まで続くのだろう。